【ロシオ・モリーナ来日公演en GARLOCHÍ出演者紹介 】
カンタオール(歌い手): Pepe de Pura
11月16日、世界フラメンコの日。そのイベントで、ぺぺ・デ・プーラがセビージャ市役所の広場で歌うというので、行って来ました。
ステージではガルロチに行ったアーチストが集まる中、間も無くガルロチに出発するぺぺがカンタオールを務めるのでした。
野外、空気も良く、夕方の太陽の日差しも良い感じ、集まった観客の反応も良い、ステージの上の仲間も最高。
そこにやっぱりぺぺのカンテは沸騰しました。
やかん(ケトル)が沸騰して鳴り始める感じで、
ぺぺの「あーい!」は「んwa aaaaAAAああああ〜い」とクレシェンドしていく、
まるで絨毯に魔法がかかって飛び出す瞬間みたいな、あれがたまらなく感動です。
ぺぺのこれが出ると、見てる(聴いてる)側もブルブル震えて興奮状態になります。
「さあ感動の出発しますよー」の合図のように、客席の感情を自然に導くカンテ。
ぺぺ・デ・プーラの名前は、母親の名「プリフィカシオン」の相性「プーラ」から生まれたぺぺ、の意。
ルシアを母に持つ「パコ・デ・ルシア」の名のような。
そのアーチスト名を命名したのは父親で、
カンタオールだった今は亡き「エル・レレ」。
子供の頃からずっと父のカンテと一緒に自分も育って来て、10-12歳の頃に父がステージに立つバルセロナのタブラオ「エル・コルドベス」で、父親に「服着て来い!」と突然言われ、
「え?服着てるけど??」と、意味不明で戸惑うぺぺに、ステージ用のシャツとズボンが用意され、その場でその服を着て歌ったのが初ステージでした。
カンテを学ぶにあたり、当時は今のようにインターネットでカンテが出てくるなんてありませんでしたから、自分の好きなカンテに対しては、その歌う人が有名か無名かは問わず、
この人はいい歌を歌うと自分が思ったら、どこの土地でも出かけて行って、呼び出して一杯奢ってまず自分が歌い、相手が歌ってくれるような環境を作り、歌わせ、質問し、自分が学ぶ。
そのように上のものから教えてもらって来たので、自分が今ここにいる、、、。
その精神があるからか、ぺぺにカンテを尋ねると、熱く親切で全力の回答がきます。
ぺぺの歌うアレグリアスの歌詞に、
なんとなく心と耳に残る気になる歌詞があり、
ちょっと尋ねると、自分で軽く歌い起こして歌詞を単語で教えてくれるのでした。
日本語訳するとただ「オリーブ」になってしまいますが、オリーブの木を「オリーボ」といい、その実は「アセイトウ―ナ」(アラビア語起源)と言います。これらの単語が並び、多くの韻を踏むその歌詞の作者はぺぺでした。
こちらは歌詞を教えてもらい辞書で歌詞を検索、、、が、しかし、
それができないのがカンテで、
短歌や俳句の季語みたいなフラメンコのキーワード語は辞書には出てこないので、どんなにスペイン語が達者な人でも土地勘やフラメンコに精通していないと、訳し切れません。スペイン人でも同様。
「オリーブの木の実と練り込んだ生地からパンが生まれ、カバの女性たちは愛嬌と美から生まれる、、、」(なんとなくの直訳ですが)
と歌うぺぺ。
カバというスペイン語、お酒(スペインシャンパン)のカバではないし、畑か洞窟か?どれも違う、、、
そしてぺぺに「カバの女性のカバはどれでしょうか?辞書のどれにもあてはまらないと思いますが?」と聞くと「cava de Triana」
ハハハハーと爆笑され、Triana 地区の昔のある場所(フラメンコのゆかりの)名称です。
フラメンコ人の間ではcava はキーワードなので。
そんなフラメンコの暗号が多々入った自作の歌詞を歌うぺぺ。
郊外でゆったり過ごし、朝早くから2匹の犬の散歩で自然と触れ合いながら生活。秘訣はそこに、、、?
詩人の世界、作詞が好きだそうです。
最近の作詞では、朝の犬の散歩の時に見つけたオリーブの木で休む愛の鳩を歌詞にしたファルーカがあるそうです。
フラメンコのカルテル(メンバー表示)の中に、
カンタオールにぺぺデプーラの名を見ると、
これは純なフラメンコだな!と皆思います。
ぺぺの名が無ければ、どういうアーチストが名を連ねていても、何か違う世界に連れて行かれるのかもしれない、、、
という可能性も考えられますが、
ぺぺ🟰flamenco 100%の表示のようなものかと思われます。
ぺぺに聞くと、
「コンパス感のない歌を求められる場合は、僕の場合は、グラナイーナ、ミロンガ、ビダリータ、このあたりを歌う。
アントニオ・マイレーナもそれらを「ファンタジーなカンテ」と呼んで歌ったし」
とバリバリ最高なコンパス感で歌うぺぺは、
ゆったりたっぷり歌うファンタジーなカンテの世界も得意とします。
先日、ぺぺが出演していた地元セビージャのタブラオ「ラ・カンタオーラ」で、ぺぺに会いに来ていたカンタオール仲間のフアン・ホセ・アマドールに、「君に捧げる!」とミロンガを歌っていました。
ぺぺ・デ・プーラ、ガルロチで歌います。
なんと言ったら良いのでしょうか、この最高度。
ガルロチにぺぺを選ぶロシオ・モリーナ、さすが!
最後に一つ、ぺぺの隠し味を一つ暴露。
闘鶏を趣味に持ち、鶏の羽や身体についてとことん詳しく、鶏専用特別免許というのを持っているそうです。
傷ついた鶏を治療したり、鶏専門獣医というような感じだそうです。
ぺぺの歌の濃さは、やはり人生の濃さと熱い人間臭さと、そのVida (生きざま)でしょうか。
他にぺぺに値する現存のこの熟年で活き活きしていて、ドキドキだけどキレキレのカンタオール、思いつきません。。。
まだまだ隠されたぺぺの持ち味を、どうぞ客席からみなさんで引き出してください。
出し切れないほど溢れきったカンテのアルテを持ってます。
皆さんも既にご存知のように、
今回のロシオ・モリナのメンバーは全員ロシオ級にすごいフラメンコ人ですから、見逃せません。
次のメンバー紹介に続く、、、。
Photo & Text/ Mayumi Shimoyama
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ロシオ・モリーナ来日公演en GARLOCHÍ
【ご予約】
WEB:
https://t.livepocket.jp/t/rociomolina
Email:
garlochilive@gmail.com
【出演期間】
2023年12月1日(金)〜12月10日(日)
【出演者】
Baile: Rocío Molina
Guitarra: Yerai Cortés
Cante: Pepe de Pura
Compás y baile: José Manuel “El Oruco”
【場所】
Show レストランGARLOCHÍ
東京都新宿区新宿3-15-17 伊勢丹会館6F
主催/株式会社バモス
後援/スペイン大使館・インスティトゥト・セルバンテス東京・一般社団法人日本フラメンコ協会・公益財団法人スペイン舞踊振興MARUWA財団
協力/Showレストラン「ガルロチ」・「ソニアジョーンズ 」Sonia Johnes